恋愛小説文庫 花模様

風のプリズム 結婚白書Ⅳ 目次
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風のプリズム 結婚白書Ⅳ 目次

うつむいていた実咲の顔が ゆっくりと僕の方へ向けられた僕も首をかしげて実咲の顔をとらえた実咲の部屋で朝を迎えるようになったのは それからほどなく 大学二年の夏が始まろうとした頃だった『結婚白書』 最後の物語は、遠野賢吾の恋1.風の章   『妹』  『家族(1)』  『家族(2)』  『恋人』   『父』 2.陸の章 『遠い記憶』  『思い出の地(1)』  『思い出の地(2)』 『秘密の扉(1)』  『秘密...
【風のプリズム】 風の章 妹
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【風のプリズム】 風の章 妹

僕の住む町に 父が赴任してくると知らせてくれたのは 9歳年下の妹 葉月だった「転校するのは嫌だけど お兄ちゃんにいつでも会えるのは嬉しいの お父さんったら意地悪なのよ”引越しすることになったけど 賢吾のいる町に引っ越すんだよ”って言うんだもんそれじゃ 私 イヤって言えないわ」 電話から伝わる無邪気な声の向こうに 久しぶりに父の笑い声を聞いた両親が離婚したのは 僕が6歳の頃「お父さんは もう お家には...
【風のプリズム】 風の章 家族(1)
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【風のプリズム】 風の章 家族(1)

葉月と歩くのは久しぶりだった背が伸びたとはいえ 中身は以前の葉月のままで 当然のように僕の手を握って歩いている妹とはいえ 小学生と手を繋いで歩くのは気恥ずかしくこんなところを誰かに見られるのではないか 誰かに会うのではないかと気が気ではなかったが僕の心配をよそに 葉月が思いがけないことを聞いてきた 「ねぇ お兄ちゃんってモテるの?」「はぁ? 何で」葉月の顔を見下ろすと 尖った口がまたしゃべりだした...
【風のプリズム】 風の章 家族(2)
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【風のプリズム】 風の章 家族(2)

夕方帰り着くと ちょうど手伝いの人たちが帰るところだったその人たちに 父が ”息子です こっちの大学に通ってまして……” と僕を紹介すると”遠野部長に こんな大きな息子さんがいらっしゃったんですか” と期待通りの答えが返ってきた父の歳にしては大きな子がいると思ったのだろうましてや 葉月とは歳が離れているから尚更かもしれない彼らが僕ら家族のことを詮索しないか 父はどう答えるのか興味があったが父は ”えぇ ...
【風のプリズム】 風の章 恋人
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【風のプリズム】 風の章 恋人

いつもなら実咲が作る朝食を待っているのだが 今朝はベッドから早く抜け出しキッチンに向かった当たり前のように冷蔵庫を開け 朝食になりそうな食材を選び出す彼女のように上手くは作れないが 僕も料理は嫌いじゃない今朝は ジャガイモを薄く切って ベーコンと焼いたハッシュドポテトがメイン活動エネルギーを得るのに最適らしく 母が朝食向きのメニューだからと教えてくれたことがあったジージーと美味しそうな音と香ばしく...
【風のプリズム】 風の章 父
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【風のプリズム】 風の章 父

好きだと言ったことはない彼女からも聞いたこともない親密になった僕らを サークルの連中は驚くでもなく「遠野と付き合える子は そうそういないよ 実咲くらいだ実咲のオタクに付き合えるのも 遠野ぐらいだ」変わり者の二人が付き合いだした 意外でもなんでもないと外野は思ったほど騒がないサークル内に小椋が二人いるため 実咲は初めから名前で呼ばれていた「妹が実咲のことを親父たちに言ったんだ そうしたら親父が 学生...
【風のプリズム】 陸の章 遠い記憶
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【風のプリズム】 陸の章 遠い記憶

今年の遺跡めぐりはどこに行こうか メンバーの意見が分かれていた毎年夏休みに国内の遺跡をたずね 合宿の名のもとに安い宿に泊まり 一晩中語り明かすのだが去年おととしと お世辞にも綺麗だと言えない場所が合宿所だったことに 女子から不満が出てきたていた「今年は私達が決めていいんだから せめて泊まる所は快適な場所にしてね三年続けて あんなむさくるしい部屋に寝るなんて いやだから」「寝なきゃいいさ どうせ夜通...
【風のプリズム】 陸の章 思い出の地(1)
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【風のプリズム】 陸の章 思い出の地(1)

合宿中の中日 僕は仲間と別行動を取っていた久しぶりに見る風景は コンビニの数が増え 新しい道ができたほかは たいして変わってはいないようだ母親の離婚のゴタゴタを避けたいこともあり 誘われるまま朋代さんの実家があるこの地に初めて来たのは5年前 親のことなど まるで感心がないように振る舞い 義理の従兄弟達と遊びまわった2週間だったここには楽しい思い出が多い 海釣りの楽しさを教えてもらったのもその時だっ...
【風のプリズム】 陸の章 思い出の地(2)
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【風のプリズム】 陸の章 思い出の地(2)

遺跡近くの高台にある合宿所から少し歩くと 見晴らしのいい展望台がある公共の施設のためか エアコンのあまり効かない宿舎を抜け出して 夜風に吹かれながら展望台への道を歩いた遠くに湾岸線の明かりが点在しているのが見え 都会の夜景とは違い華やかさはないが充分に綺麗で深く息を吸い込むと 森林の中の木々の香りが微かにした桐原の祖父母は いつも僕のことを気遣ってくれていた会ったのは5年ぶりだったが 父を通して毎...
【風のプリズム】 陸の章 秘密の扉(1)
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【風のプリズム】 陸の章 秘密の扉(1)

合宿の最終日 新幹線の出発時刻まで繁華街へ出かけるというサークルの仲間と別れ僕は実咲と一緒に また桐原の家を訪ねていた連れがいるとは伝えていたが まさか彼女だとは思っていなかったらしく 高志おじさんに散々冷やかされたがそんな中でも実咲は 祖父母やおじさんたちと気さくにしゃべり 話題は僕の小さい頃の話に及んで おおいに焦った「賢吾君ってね 小さい頃から静かな子だったけど ときどき羽目をはずすのよ 私...
【風のプリズム】 陸の章 秘密の扉(2)
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【風のプリズム】 陸の章 秘密の扉(2)

秋になり 僕らはそれぞれ忙しいときを過ごしていた少しずつ就職活動も具体化しているようで みな顔つきが真剣になっている僕もさすがに のんびりとしてはいられなくなり それまで漠然と考えていたが 夏の経験でやはり好きな道に進もうと決めた早くから目標を定めていた実咲は 実習に追われながら 自分の道を着実に進んでいるようだ夏の合宿後 言おうか言うまいかずい分悩んだが 実咲には話しておくべきだと思い僕の家庭の...
【風のプリズム】 陸の章 大事なこと(1)
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【風のプリズム】 陸の章 大事なこと(1)

僕を呼ぶ声に振り返ると 葉月らしい姿がぼんやりと見えたような気がした……お兄ちゃん お兄ちゃん……何度も何度も呼んでくれるのに 思うように声がでず返事が出来なかった駆け寄って行こうとするが 足が前にでない苛立って叫んだつもりだったが やはり声になってはいなかったふと手のひらに温かさを感じたまるで手を繋いでいるような心地良さだ時には甲をなで 両手で包み込んでくれる手を握り返したいのに どうしても出来ない...