K,Nadeshiko

恋愛小説文庫 花模様

カテゴリ瑛先生とわたし 1/4

【瑛先生とわたし】 プロローグ - マーヤ - 

”マーヤ” と呼ぶ声は甘く いつも私をウットリとさせる瑛 (あきら) 先生の声はそれほど心地良く まるで羽根でなでられたように ふわりと耳をくすぐるの 「マーヤ そこにいるんだよ」優しい目にそう言われると 何があっても動かないわ とさえ思う私は言われたとおり お気に入りの椅子に座ると じっと先生の手を眺めることにした息を詰め 一心に紙に向かう姿は 妥協を許さない先生らしく 眼差しがいつもと違う 優し...

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【瑛先生とわたし】 1  - 先生の息子 渉(あゆむ) -

                           瑛(あきら) 先生が筆をとる紙の前で すぅっ と大きく息を吸い ふっ と呼吸を止めて力強く一筆をおろすなんて素敵な横顔なのかしら もう何回も見ているのに 一文字目に筆をおろすときの表情は 私を惹きつけてやまないの体を揺らしながら 一気に文字を書き上げていく動作はまるで音楽にあわせて体を動かすようで リズムにのって筆が進んでいく瑛先生の身のこなし...

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【瑛先生とわたし】 2  - 先生の友人 龍之介さん -

                           あっ あの人が来た……アメリカ製の車の音は 音に特徴があるから嫌でも耳に入るの それに無駄に大きいのよねこの家の駐車スペースの二台分を占領しちゃうんだから ホント迷惑 バンッ って 乱暴にドアを閉める音までも聞こえてきた”オレが来たぞ!” って自己主張してるみたい瑛先生の亡くなった奥さんのお兄さんだから この家で大きな顔をしても誰も文句は言わないけ...

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【瑛先生とわたし】 3  - 花房家の家政婦 林さん - 

                           あの音は 林さんの自転車の音キーッとブレーキの音がして スタンドをカシャンと立てると 鍵をかける小さな音がする毎日 同じ時刻に来て 同じ音とともにやってくる晴れた日は鼻歌まじりで玄関まできて 一瞬立ち止まり 背筋を伸ばしてからドアを開ける雨の日はカッパを脱いで 自転車に広げてかけて 乱れた髪を直しながら玄関にきて やっぱり背筋をのばす出窓から私...

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【瑛先生とわたし】 4  - 市民センター副所長 深澤さん - 前編

                           今日は深澤さんがやってくる日真っ赤な小型車が止まったのを確認すると 家政婦の林さんが私を呼んだお気に入りの椅子から降りると 林さんが抱っこしてくれる そのまま先生の仕事部屋を離れた市民センターの副所長の深澤さんは 猫アレルギーなんだってこの家に初めてやってきた日 私を見て一瞬あとずさりしたの”すみません 私 猫ちゃんダメなんです 嫌いじゃないん...

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【瑛先生とわたし】 4  - 市民センター副所長 深澤さん - 後編

                           それ以来先生の勧めもあり 通信教育という形で字の練習をしているお手本をもとに自宅で書いたものを先生宅に届ける先生がいらっしゃれば その場で添削していただいて お留守なら林さんに預けて 後日添削された物を取りに伺う少しずつではあるけれど 私の字は見られるようになってきた「この字がいい 瑠璃さんの字には勢いがある 大作が向いているかもしれないね」「...

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【瑛先生とわたし】 5  - 公民館講座の世話役 三木さん - 前編

                           『三木工務店』 と書かれたミニバンが エンジンを唸らせながらやってきたミニバンのエンジン音って 三木さんそのものって思っちゃう玄関を入るなり大きな声で話をはじめるし この家の静かな雰囲気をぶち壊すのあぁ イヤだなぁ部屋を逃げ出したいけど いつもつかまってしまう三木さんって無類の猫好きなの私の姿が見えると駆け寄ってきて 必ず抱っこしてノドをなでて...

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【瑛先生とわたし】 5  - 公民館講座の世話役 三木さん - 後編

                           今日こそ瑛先生の気持ちを聞いてくるぞ と勇んで家を出掛けた真佐子にも 「作戦があるから 任せとけ」 と大風呂敷を広げてきた作戦というのは まずは 『猫の縁談』 をまとめることだウチにいる三匹の猫はそろって適齢期のオスで この息子達と瑛先生の家のマーヤを見合いさせようって寸法だそれが成功して マーヤに家庭ができれば 先生もその気になるんじゃないか...

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【瑛先生とわたし】 6  - 一色動物病院 菜々子先生 - 前編

                           今日は先生とドライブといっても 私はカゴ中だけど……先生が ”少しのあいだだからね” って言うから 仕方なくカゴに入ってるの行き先はきっと 一色動物病院ね一年に一回 予防接種をしなきゃいけないんだってイヤだなぁ でも 奈々子先生に会うのは楽しみ先生に ”大丈夫よ ちょっとだけ我慢ね” って体をさすられると なんとも心地いいの看護師さんも優しいし みん...

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【瑛先生とわたし】 6  - 一色動物病院 菜々子先生 - 後編

                           流した涙のあとにやってきた幸せは本当だった仕事を通じて出会った男性は 私の家の事情も理解した上で ”結婚しよう” と言ってくれた父が急逝したため 祖父から続いている動物病院の跡を継ぎ 名前は私の姓のまま 彼との結婚生活が始まった二人の子どもにも恵まれ もうひとり欲しいね なんて話をしていた矢先 夫の病気がみつかったあっという間だった 若いから進行...

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