恋愛小説文庫 花模様

EpisodeⅡ 
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EpisodeⅡ 

   神崎籐矢の過去に暗い影を落とすテロ事件 犯人を追って再び海外へ行く決意をする籐矢 籐矢の決断を知った水穂がとった行動とは!  舞台はヨーロッパへ・・・  ...
【Shine】 1 ― 別離― 前編
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【Shine】 1 ― 別離― 前編

クリスマスイルミネーションが煌く街中を歩く足取りは重く、行き場のない心を抱えているためか、水穂の表情は明るいものではなかった。 行きかう人々が誰も彼も幸せに見えて無性に腹立たしくなってくる。それなら真っ直ぐ家に帰ればいいものを、つい繁華街へと足を向けてしまうのは、静けさに身を置くのが怖いからだとわかっていた。 あの夜から何日が過ぎたのだろうか。 指折り数えようとしてポケットから手を出したが、冬の冷た...
【Shine】 1 ― 別離― 後編
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【Shine】 1 ― 別離― 後編

腕の中で、おぼろげに籐矢の声を聞いた記憶があった。 ”シャワーはどうする。一緒にどうだ” と聞かれ首を振ると、”そうか 残念だな……じゃぁ 次な” と耳元で笑いながらささやいたあと、温かな肌が離れて気配は遠ざかって消えた。 ほどなく水音が聞こえ、水穂は深い眠りへと入っていった。 次に目が覚めたとき、籐矢の姿はどこにもなかった。 やはり行ってしまったんだと、わかっていたことなのに、ひとり取り残された寂しさをど...
【Shine】 2 ― 聖夜の想い― 前編
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【Shine】 2 ― 聖夜の想い― 前編

コートの襟を立てても冷気を防ぐことはできず、凍てつく街を歩き回るのも難儀なものだと、思わず愚痴が口をついていた。 尾行を撹乱するため通りを行きつ戻りつし、古い町並みの路地へと踏み込んだ。 待ち人が指定した店はすぐ目の前に迫っていたが、神崎籐矢は後ろの二人をどうしたものかと思案していた。   東欧のこの街に入って二週間が過ぎていた。 密輸されたボルト一本からたどり、こんなところまで来てしまったと呆れなが...
【Shine】 2 ― 聖夜の想い― 後編
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【Shine】 2 ― 聖夜の想い― 後編

 休日の朝、香坂家に現れた籐矢の装いは、これまで見たこともない落ち着いたもので、水穂の母の曜子など、「神崎さん、良くお似合いだわ」 と素直な感想を告げ、かしこまった籐矢は似合わない照れた顔をしていた。 「どこに行くんですか?」 「行けばわかる」 「えーっ、教えてくださいよぉ。誰かに会うんですか? もしそうだったら私も心の準備が必要です」 「それもそうだな……」 そう言いながらもすぐには答えず、運転中...
【Shine】 3 ― 現在と過去― 前編
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【Shine】 3 ― 現在と過去― 前編

 歩き慣れた道は以前と何ら変わることなく、同じ表情で籐矢を迎えてくれた。 数年前、日本から抱えてきた重い心と一緒に歩いていた道は、歩くほどに心の重荷が少なくなり、毎日会う人々の行きかうたびにかわされる挨拶が籐矢の顔を明るくしてくれたのだった。 東欧から始まった追跡は西へと進み、先週から懐かしい街へと入っていた。 三年間を過ごした街には馴染みも多く、手掛かりを求めるには最適な条件がそろっている。 籐...
【Shine】 3 ― 現在と過去― 後編
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【Shine】 3 ― 現在と過去― 後編

 栗山へ別れを告げたのも、こんな雪の降る日だった。 水穂の話を聞き 「わかった」 と短い一言のあとうなずくと、栗山は寂しそうな笑みを浮かべ別れの言葉を受け入れた。 私のわがままで優しい人を傷つけた、それなのに、何も言わず私を手放してくれた、 栗山さん好きでした、ごめんなさい…… 雪道を歩きながら自責の念にさいなまれ、鎮めようのない心を受け止めて欲しくて、その夜、籐矢のもとを訪れ苦しさを吐き出した。 ...
【Shine】 4 ― 求め合う心― 前編
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【Shine】 4 ― 求め合う心― 前編

日本より少し遅れて季節がやってくるこの町は、東京より遥か北に位置しているが降雪するほどの寒さはない。それでも病室の窓から見える景色には、まだ冬の名残があった。「日本は桜の季節でしょう? もう一度行ってみたいわ……日本に行くなら絶対に春ね」 「もうそんなころか」 「トーヤの回復力がすごいって、先生が驚いてた。だけど、リハビリ、頑張りすぎじゃない?休むことも必要よ」 「そうだな……」籐矢はソニアの声に急に眠...
【Shine】 4 ― 求め合う心― 後編
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【Shine】 4 ― 求め合う心― 後編

 廊下からソニアの朗らかな声が聞こえてきた。 検査と静養ばかりの病院にあって、籐矢にとってソニアの声は安らぎだった。 今日はどんな顔を見せてくれるのだろう。 ソニアが抱えてくる赤ん坊の顔を想像して、籐矢の顔はほころんだ。 「まさか子連れの女が仲間とは思わないでしょうね」 そう言いながら、ソニアはあるものを抱いて毎日やってきた。顔を覆うおくるみに包まれソニアの腕に抱かれた人形は、傍目には本当の赤ん坊...