恋愛小説文庫 花模様

【 あしたになれば 】 1
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【 あしたになれば 】 1

     心が溶けるような恋をしたいと思うようになったのは いつの頃からだろうただひたすらに相手を求め 身も心も捧げたいと思うような恋こんな話をすると 友人の愛美は ”そんなの損じゃない” という恋は相手に求められてこそ満足するもので ”こっちが与えるだけじゃ わりに合わないわ” というのが愛美の持論だったそういい切るだけに彼女の恋は いつも男が愛美に夢中になっている愛美のほうは冷...
【 あしたになれば 】 2
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【 あしたになれば 】 2

     村越さんは相変わらず私をフルネームで呼ぶおかげで たくさんの人に名前を覚えてもらい 意外な発見や経験もあった村越さんは ”部下に任せています” ではなく ”ウチの課の門倉奈菜美に任せています” と言った表現をする相手に伝言を頼む際も ”担当の者に伝えてください” ではなく ”門倉奈菜美が担当しております 門倉にお伝えいただけますか” と言う名前を連呼されるので 嫌でも相手の記...
【 あしたになれば 】 3
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【 あしたになれば 】 3

    翌日から 村越さんに対する私の態度は変わった仕事は完璧 部下にもそれを求めようとする厳しさがあるけれど その心の奥には 温かくて愛情深い気遣いがあるこの人と一緒に仕事ができることが嬉しかったそれが ”恋” だと気がついていたあの夜 私は村越さんに恋をした一途に誰かを思う 彼の心に打たれたあなたが誰を好きでもいい 私はあなたが好きだから……まるで どこかの歌の詩のような想いって ...
【 あしたになれば 】 4  前編
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【 あしたになれば 】 4  前編

     村越さんが結婚したとわかった日 それはもう課内は大騒ぎだった「おめでとうございます」 と村越さんに祝福を言った口で「奈菜美 どうして黙ってたのよ 知ってたんでしょう? ひどいじゃない!」 と 私は責められたそんなこといわれたって 「バラすなよ」 って口止めされてたんだから 言えるわけないでしょうだけど どれだけ嫌味を言われても その日の私は気分がよかった心から村越さん...
【 あしたになれば 】 4  後編
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【 あしたになれば 】 4  後編

    自由気ままに過ごしているとばかり思っていた妹が 交際中の彼と結婚したいと言い出したのは二ヶ月前のこと驚くことに 「彼と一緒に家業を継ぐ」 と宣言して父を大いに喜ばせた奈菜美は誰とでも結婚して良いぞ なんて父に言われ 長女の威厳も半減……母など 「大悟君とどうなってるの?」 とあれほどせっついていたのに そんなことも忘れたように妹の結婚準備に忙しそうだこんなとき 誰かにかまって...