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恋する理由 結婚白書Ⅱ 目次
コラージュ kuraminn「面白いヤツが入社してきたぞ」人事課長が履歴書を見せてくれた私から見ればなんてことない 無愛想な顔じゃないの新人君の名前は 『工藤 要』 実にふてぶてしい 新人だった恋愛休暇中の円華の前に現れたのは 年下の彼...1 ― 出会いは突然に ―2 ― それは思いがけず始まった ―3 ― 怪我がもたらしたものは…… ―4 ― キスの余韻に戸惑っ...
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【恋する理由】 1 ― 出会いは突然に ―
テーブルの上の招待状を手に取り あらためて見た淡いピンクのレース模様が印刷され いかにも彼女らしい色づかい『広川 円華 様』彼女の見慣れた字が懐かしく思えた今日は和音ちゃんの結婚式だったウェディングドレスは 優しげな彼女の肩からドレープが長く伸び 柔らかい曲線を作っていた素敵な新郎は 彼女の足下に気を配りながらゆっくり 大事そうに彼女をエスコートして入場してきた あぁ 彼女はこんなに大事にされてる...

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【恋する理由】 2 ― それは思いがけず始まった ―
中途採用のため 彼と接する機会は多かったあらゆる手続き 書類の提出 そして 不備な点を指摘して再提出してもらう面倒くさがりなのか いい加減に書いてくる「ねぇ どうして一回で完璧に提出できないの?記入の仕方だって ここに書いてあるでしょう!これを見ながら書けば間違いないのよ」つい 声を荒げてしまうそれなのに 反省するどころか「えーそうですか?ちゃんと書いたつもりだったんだけどな~ 書いてないところが...

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【恋する理由】 3 ― 怪我がもたらしたものは…… ―
検査で骨に異常はなかったが 右足首をひどくひねったらしく 歩くのが困難だった診断の結果……足関節外側靱帯損傷「捻挫のひどいものですよ しばらく足を固定した方がいいでしょうね」診察してくれた医師の言葉固定するって?湿布くらいですむのかと思っていたら ギブスに近い装備が施されてしまった痛みもひどいので その日はそのまま退社した当分車の運転も出来ない右足だし アクセル ブレーキ どちら...

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【恋する理由】 4 ― キスの余韻に戸惑って ―
ベッドに入っても なかなか寝つけなかったさっきの自分の姿を思い出すだけで 体中が火照ってくる唇を離した後「これで信じてもらえました?」工藤君の問いに 黙っているしかなかった「残念だなぁ でも わかってもらえるまで待ってますよ」待ってる?何を?私がアナタを好きになるのを待ってるって?わからないそんな思考回路を理解しろって言うワケ わからないなんで私がアナタを好きにならなきゃいけな...

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【恋する理由】 5 ― 波間に揺れて ―
朝靄の中の海は 波音ひとつなく 静かな表情を見せていた私は 何度目かの深呼吸をした潮の香りがする鼻の奥が 潮のしょっぱさを感じ取り風を受けて 湿っぽい空気が肌にまとわりつくのも悪くなかった朝凪は 不思議と 私を落ち着かせたまた深呼吸「気持ちいいでしょう?朝日が昇る前の海が 一番静かで綺麗なときなんだ」ここを釣りのポイントと決めたのか工藤君は ボートを止め釣り竿の用意を始めている...

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【恋する理由】 6 ― 優しさの理由は…… ―
夕方 家に帰り着いたが 食事をする気にならなかったいぶかしがる母に「ごめん 食べて来ちゃった」そう告げて 早々に自分の部屋に引き上げた”去年 親父が交通事故にあって大変だったんだ”彼のお父さんの話は聞いていた事故で重傷を負い 回復した現在も歩行困難で 介護が必要なこと退院して自宅療養中で 寝たきりにならないように 家族が協力してリハビリに励んでいるとでも 今日聞いた話は 私の予想...

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【恋する理由】 7 ― 充たされて そして…… ―
私と彼の休日は 夜明け前に始まる夜明け前の海にボートをだし 釣り糸を垂れる日が高くなる前に海を引き上げ シャワーを浴びにホテルへそして 当然のように肌を重ね その後 彼は私の胸で熟睡する毎晩 お父さんの入浴や歩行の介助いくら若い彼でも 相当な疲労だろうホテルで寝入ってしまった彼に はじめは驚いたがそのまま 寝かせようと思った「いま何時?」目を覚ますと 必ずそう聞いてくる「えーっ...

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【恋する理由】 8 ― 未来が見えた日 ― 前編
”お袋が 円華に会ってみたいって”要の言葉が心に重くのしかかる私に会ったら 私を見たら 彼のお母さん なんて思うだろうこんな年上の彼女と付き合っていたのかと思うに違いない要も30歳になったばかり なにも 8歳も年上の女と付き合わなくてもいいのにと思うわよね要もどうしてお母さんに話をしたの?本当に私と結婚するつもり?まさかね……これまで一度も 要の口から「結婚」の言葉を聞いたことはな...

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【恋する理由】 8 ― 未来が見えた日 ― 後編
要の家の周りは 花であふれていた玄関はもちろん 庭の奥に至るまで手入れが行き届いているのがうかがえた「お袋の趣味なんだ」途中まで迎えにきてくれた要が教えてくれた要のお母さんは ふんわりとした 穏やかな人だった庭の花々に見とれている私に「まぁ ようこそ 外からお声がしたから……こちらにいらしたのね」庭の奥から姿を現した 彼のお母さんのまろやかな声は私の緊張を 一気に解きほぐした「花...

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【恋する理由】 9 ― 父の想いは藍より深く ―
今日はあいにくの雨要は 上品な色の背広にネクタイ背が高い彼によく似合っていた手には 大きな花束を抱えている 花束と要の組み合わせが可笑しくて笑えたけど ぐっと笑いをこらえた 「背広を着てきたんだ へぇ~ 案外しっかりしてるじゃないの」彼も さすがに今日は緊張してるのか 私の冗談にも真面目な答えが返ってきた 「お父さん 認めてくれるかな こんな日に雨が降るなんて 前途多難だな」そ...

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【恋する理由】 10 ― 明日へ向かって ―
今日は 誰からも話しかけられないように 忙しいふりはぁ……帰りたくなってきた 玄関で転んだあと目に入ったのは心配そうな要の顔と すべてを悟ったような加藤専務の顔「広川君 大丈夫か?」心配してくれているのに どこか笑いを含んだ専務の表情「大丈夫です」さっと立ち上がり 何事もなかったかのように歩き出すただ 後ろの会話がやけに気になる”工藤さん 「まどか 危ない」って言ってたよね まどか...