恋愛小説文庫 花模様

『ボレロ』 第一部 登場人物紹介 (随時加筆)
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『ボレロ』 第一部 登場人物紹介 (随時加筆)

 【ボレロ】 第一部 登場人物紹介  『主な人物』近衛 宗一郎 ・・・珠貴と出会ったのち、友人として接するうちに徐々に惹かれていく           近衛グループの次期後継者 現在は副社長の職にある須藤 珠貴 ・・・ 宗一郎と出会ったことが自分の将来を見つめなおすきっかけになる           須藤家の長女 『SUDO』を継ぐ立場にある 宝飾部門デザイン室長『近衛家 宗一郎の周辺の人...
【ボレロ】  46-5 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)
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【ボレロ】  46-5 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)

   パウダールームの明かりが私の肌を照らし出す。 体の火照りは静まったと思っていたのに、まだ赤味の差した肌が鏡の中にあった。 染まった頬にくわえ艶やかに潤う肌は、彼との時間がもたらしたものだ。 ファンデーションをのせる程度では隠せないほど、私の肌は変化していた。  ”俺に会ったと、誰にも言ってはいけない” ”わかったわ……”  約束したのだから、彼と会った痕...
【ボレロ】  46-4 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)
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【ボレロ】  46-4 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)

   一連の週刊誌騒動から三週間がすぎていた。 秋の気配は一段と色濃くなり 「君の服に秋を感じるよ」 と宗が言ってくれた薄手のニットも、肌寒いと感じる 気候になっている。  宗と会えない日が続いていた。 週刊誌騒動が起こる前は、出先で偶然顔を合わせることも少なくなかった。 パーティーや祝賀会といった席に、父親の代理として顔を出す機会の多い私たちは、会場内で会えば...
【ボレロ】  46-3 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)
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【ボレロ】  46-3 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)

知弘さんの口が開き、私たちが最も知りたい情報が言葉になろうとした瞬間、それを邪魔するようにデスクの 電話が鳴り響き、身構えた姿勢をといた浅見さんが冷静な声で対応した。  「香取可南子さまが、ただいまおつきになりました」 「約束の時刻まで、まだ一時間もあるじゃないか。君たちと顔をあわすことのないように時間をずらしたのに、 相変わらずせっかちな人だ」 「専務は来客中ですと、お伝えいたしましょうか」 「待たせ...
【ボレロ】  46-2 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)
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【ボレロ】  46-2 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)

   「浅見君は今のところ何もないようだが、堂本、君はどうだ。 身辺をさぐられている気配はないか」   「ありません。ですがこの先、私や浅見さんの経歴に目を向ける記者がいれば、 それこそ躍起になって探ってくるでしょう。  いまさら経歴を伏せることもできませんから、できるだけ行動に気をつけるしかないかと思われますが」  「うん、君たちには窮屈な思いをさせるが、気を...
【ボレロ】  46-1 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)
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【ボレロ】  46-1 - ben marcato - ベン マルカート (よく注意して)

   外の風を感じたくて車の窓を少しだけ開けると、秋の気配を含んだ爽やかな風がすべるように流れ込んできた。    「申し訳ありません。お閉めいただけますか。 走行中の窓の開閉は、避けたほうが良いと指示がありましたので」  「あっ、ごめんなさい……そうですね。どこから見られているか、わかりませんものね」   一昨日発売の週刊誌は、私の環境に大きな変化をも...
【花香る下で】 17 -夏深く- 後編 
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【花香る下で】 17 -夏深く- 後編 

    向かい合わせの食事の時間をすごしたあと それまで遠慮がちだった里桜の言葉に 気安さがみえるようになっていた。 このまま帰りたくないというのが二人の正直な気持ちだったが 里桜を迎えにやってくる秘書の白井との約束の時刻は あと40分ほどに迫っている。 少しでも一緒に過ごしたい思いはどちらも同じで 寄り添うように歩きだすと 隣り合った手が自然につながれた。 白井の車が待つ...
【花香る下で】 17 -夏深く- 前編 
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【花香る下で】 17 -夏深く- 前編 

  神社から食事の店まで10分ほどの距離を歩くあいだ 里桜は口を動かし続けた。 父に連れられて何度も通った道なのに 今まで神社に気がつかなかったとか その先の商店街で買い物をすると気前良くおまけをしてくれるとか どうでもいい話だと思いながらも 沈黙になれば胸の高鳴りと浮き足立った気持ちを祐斗に気づかれてしまいそうで しゃべる事をやめられずにいるのだった。 祐斗も相槌をうちながら 熱...
【ボレロ】  45-5  - rinforzando - リンフォンツァンド (急に強く)
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【ボレロ】  45-5  - rinforzando - リンフォンツァンド (急に強く)

   朝食の準備が整った頃、柘植さんと雅ちゃんが相次いで到着した。 珠貴を加えた初対面の三人は和やかに挨拶を交わし、自己紹介がすみしばらくすると、旧知の間柄のように 会話が弾んでいた。 これから楽しい会食でもあるではと思うほど、和気藹々 (わきあいあい) とした雰囲気だ。 これから大変な事態に遭遇しようとしているのに、女性三人の誰も取り乱すことなく、冷静に事を受け止めて...