【Shine】 11-8 ― 陰謀と策略 ―



 掲示板の隙間から見える蜂谷の動きを、籐矢たちは注意深く見守っていた。

目の前に容疑者がいるのに、籐矢も潤一郎もなぜ捕えようとしないのか、いますぐにでも捕まえられるのにと水穂はじれったい思いでいたが、微かに聞こえてきた足音を感じ取り、前のめりの気持ちと体をゆっくり後ろに引いた。

絵の前にいた蜂谷も人の気配に気がついたとみえ、バーラウンジ脇に身を隠した。

やってきたのは角田と仲間たちだった。

彼らの後方には尾行してきた水野が控えている。

静まり返ったロビーに集まった人数は10人にもなっていた。

これから何が起こるのか、期待と不安で水穂の胸の鼓動は大きくなっていた。

角田の合図で仲間のひとりが壁から絵を外し、その場で額がはずされたが、覗き込んだ顔が強張った。



「ないぞ」


「よく探せ」



切手を探すことに必死になっている彼らには、背後から近づく蜂谷の足音は聞こえなかった。



「探し物は見つかったか」



背後からの人物の出現に、4人の男たちの体は大きく反応した。 



「どうしてここにいるんだと言いたいようだね。僕に何を飲ませた!」



3人は蜂谷の勢いにひるんだが、角田は見返した。



「ノンアルコールのカクテルですよ」


「ノンアルコールなものか。眠らされて、起きたら昼食会は始まっていた」


「俺たちのグラスと間違えて渡したのかな? 



酔って目が覚めないなんて、よほどお疲れだったんですね。

そうだ、昼食会の演奏は無事に終わりましたから安心してください」



五重奏を4人でやったのかと顔をしかめる蜂谷へ、誰も自分たちの演奏なんて聞いてませんよと角田が返す。



「蜂谷理事長は体調不良ってことにしておきました。二日酔いって理由よりいいでしょう?」


「酒くらいで半日寝たりしない。薬を入れて飲ませただろう」


「そんなことしませんよ」


「手首に縛った跡があった。僕が起きたら困るから縛ったんだな」



角田たちは顔を見合わせ、バレたのか、じゃぁ認めますと言うが、悪びれた様子はない。

どうしてこんなことをしたのかとの蜂谷の問いかけに、何も知らないんですねと薄ら笑いを浮かべた。



「蜂谷理事長、本当に気がついてないんですか? アンタの財団が利用されてるのに」


「利用されてる?」



詰め寄る蜂谷と鷹揚に応じる角田の様子を、掲示板裏に身を潜める籐矢たちは息を殺して見守っていた。

仲間割れではないかと潤一郎は睨んでいたが、蜂谷は角田たちにとって邪魔な存在のようである。



「アンタのおじいさんの大事な財団は ”あのひと” が牛耳っているんですよ。

なにも知らないってのは、ある意味幸せだな」


「財団でなにが起こってるんだ? 知ってることを教えてくれ!」



角田に詰め寄った蜂谷は、問い詰めるというより懇願した顔だった。

祖父から受け継いだ財団でなにが行われているのか、理事長としては見過ごせない。

掲示板裏の籐矢たちも耳をすませた。



「いいですよ、教えてあげますよ。

財団に所属する留学生を使って、武器の部品を海外に運ばせて不正取引をしていたんですよ。

”あのひと” の言う通りにしていたら、俺たちも知らないうちに運び屋にさせられていた。

大事な財団が密輸団の隠れ蓑だったとは、理事長もショックでしょう」


「密輸……学生が運び屋……」


「留学先と日本を往復するときに運ばされた。けど、学生は知っちゃいない。

楽器ケースに細工されてたなんて、誰も気がつきませんからね」


「君はどうして気がついた」


「俺たちは選ばれたんですよ。

そして ”あのひと” に見込まれて、新人を誘い込む仕事を任された。

世の中を変えてやろうっていう計画を聞いてワクワクした。

すごいことを考える人がいるんだと感動したね」



腐った世の中を変えるためには大改革が必要だ。

まずは壊すことから始めなければならない。

徹底的に壊して、それから作り上げる、それには膨大な資金がいるのだと、角田は仲間と一緒になって熱弁した。

水穂の頭を無差別テロの文字がよぎる。

各国で未遂に終わった事件や、一連の大使館のテロ予告にも蜂谷財団が送り出した留学生が関わっていたのか。

もしそれが事実なら、籐矢がずっと追いかけてきたテロ犯がこの中にいるということだ。

絶対に逃がさない、必ず捕まえてやる。

水穂は高ぶる気持ちを握りこぶしに込めた。

そのとき、籐矢は水穂と異なることを考えていた。

蜂谷の問いかけに、ある意図的なものを感じていた。

もっとも角田の方は気がついていないのか、何も知らなかっただろうと言わんばかりに、蜂谷へ自慢するように語っている。

蜂谷の巧妙な質問に、落とし穴があるとは気がついていない。

角田が ”あのひと” と何度も口にしているのに、それは誰かと聞いてこない蜂谷を不審に思わず、蜂谷の巧みな誘導で情報をしゃべらされているのだ。

籐矢は蜂谷の言葉の裏を探ろうとしていた。

潤一郎もまた会話に潜んだ罠に気がつき、蜂谷が角田からどれだけの情報の引き出すのか注意深く聞いていた。

しかし、蜂谷が敵か味方か、籐矢も潤一郎も判断しかねていた。



「そんなことでテロの手助けをしたつもりか?」


「テロじゃない! 正義だ」


「正義だか何だか知らないが、君たちは資金稼ぎに使われただけじゃないか。

そんなことにも気がつかないのか」



蜂谷の容赦ない指摘に、角田の顔に怒りがにじんだ。



「そうだよ、だから ”あのひと” の言うことには従わない。

俺たちの手で世の中を変えてやろうと思っていたのに、使いっ走りばかりだ。

危ない橋を渡って、いいように使われて、いつか切り捨てられるんだ。

そうなるまえに、こっちから切ってやる」


「そうだ、そんな連中とはすぐに手を切るべきだ」



はぁ? なに言ってるんだアンタと、角田が呆れ顔になり、仲間と顔を見合わせ鼻で笑っている。

物陰からじっと様子をうかがう水穂には、彼らの笑いの意味がわからなかった。

籐矢を見上げるが、前を見たまま身じろぎもせず、潤一郎も目の前の会話に集中していた。



「仕返ししてやるんですよ。俺たちの力を見せてやる」


「正体もわからない相手に、どんな仕返しをするつもりだ」


「”あのひと” に渡す金をいただくんですよ。俺たちをパシリに使った仕返しだ。

今度だって、説明もなく絵を持ってこいと言われた。

小さいが価値のある絵だから持ち出すのかと思ったら、絵は元の場所に返せと言うじゃないか。

なぜそんなことをするのか疑問に思わない方がどうかしてるよ。

絵に仕掛けがあるんじゃないかと思った。だから、二枚目を渡す前に額の中を見た。

そしたら何が出てきたと思います? 古い切手ですよ。

切手シート一枚分、なんだそれがどうしたと思うでしょう。

調べて驚いた。海外の切手コレクターが血眼で探してる切手シートだったんですからね。

いくらだと思いますか? アンタには想像もつかないだろうな」



それまで角田の話を黙って聞いていた蜂谷が、フッと鼻で笑った。



「あっ、その顔、馬鹿にしてるでしょう。

たかが切手シートだと思ってますね。聞いて驚かないでくださいよ。

いや、驚いてもらおうかな」



自慢顔で切手の値段を口にしようとした角田よりも先に、蜂谷が口を開いた。



「日本の取引価格が一枚二千万円だ。欧米のコレクターの間ではもっと高い値がついている」


「どっ、どうして知って……」


「彼に渡したのは一枚だけなんだな? ほかの絵に隠された切手はどうした。

角田君が持っているのか。なぜ福井マネージャーに渡さなかった。君たちが持っているべきものじゃない」



蜂谷の返事に、一斉に彼らの顔色が変わった。

福井マネージャーと聞こえると男たちは小さな悲鳴を上げ、角田の唇も震えはじめた。



「切手を売って得た金で遊ぶつもりだろうが、そう上手くはいかないぞ」


「どっ、どうしてだよ。いい加減なことを言うな……」


「切手をどこに持ち込むつもりだ。

君らもネットの売買が危険だと言うことくらいわかってるはずだ。

切手専門のショップか収集家か、そんなところだろうが、コレクターでもない学生が持っているだけで出所を疑われる。

市場に出回ることのない希少切手を預かったショップはどうすると思う? 

警察に通報するんだよ。君たちは現金を手にすることなく捕まるのさ」


「うっ……」


「福井君に任せておけば、間違いなく処理してくれる。

それは君たちの手に負える代物じゃないんだぞ」



掲示板裏の籐矢と潤一郎も、マネージャーの名前に大きく反応していた。

福井は久我会長へステッキの先を向けてきた人物だったのだ。



「理事長、アンタもグルだったのか」


「グルと言う表現は正しくないね」


「どういうことだよ……」



角田と蜂谷の力関係が逆転しようとしていた。

蜂谷の言葉の意味を読み取った籐矢と潤一郎の顔に険しさが加わった。



「君たちに指示を与えていたのは僕だよ」


「ウソだ! みづきが連絡役だった。あの人の言葉を伝えて……

えっ、”あのひと” がアンタだったのか。みづきはアンタの手先?

まさか……薬を飲ませたのも彼女だ。俺たちの言いなりだった。そんなはずない!」


「僕に薬を飲ませたのは、君たちに逆らわない方がいいと思ったからだろう。

確かに彼女は僕の指示を君たちに伝えていたが、詳しいことは何も知らされていない。

単なる連絡役にすぎない。君たちが見張り役に使っていた相川君や柴田君のようにね」



君たちは小さな駒にすぎないのだと、蜂谷は高飛車に言い放った。

蜂谷と角田の立場は完全に逆転していた。



「角田君、君が反逆者になろうとしていたことも、とっくにわかっていたよ。

君たちを見張るために僕も演奏に加わったのに、薬で眠らされたのは不覚だった。

もっとも、僕を助ける仲間はほかにもいるし、僕がいなくても計画は進むことになっている」


「俺たちが知らないことがあるのか。えっ? なんだよ!」


「君たち4人がメインで動いていると思っていたとはね」


「ほかにもいるのか? 誰だ」


「考えればわかるはずだよ」



蜂谷はわざと答えを焦らした。



「誰だ……おまえらも考えろ」



苛立つ角田は仲間を叱りつけた。

あっ、と大きな声を出した男が叫ぶ。



「『黒蜥蜴』 だ!」 


「そうだ。俺たちに切手を集めさせて、『黒蜥蜴』 は何をしてる。

あっ、ほかにも隠し財産があるんだな?

奴らにそっちを任せたのか。切手より価値のあるものか!」


「さぁね」


「『黒蜥蜴』 のほかにも仲間がいるのか」


「どうだろう」 



蜂谷がニヤリと笑う。

下っ端に教えることはないとでも言うような顔だった。

事件を企てたのは蜂谷だったとは……

驚愕の事実に水穂はたじろぎ、栗山も動揺を隠せないのか目が落ち着かない。

籐矢と潤一郎は、むしろ蜂谷の話を聞き確信を得た。

潤一郎は次になすべきことを考えていた。

昼食会の場で 『黒蜥蜴』 のマネージャーを捕えた時点で、楽団のメンバーの行動も制限した。

だが、暴行を働いたのはマネージャーであって 『黒蜥蜴』 のメンバーではない。

マネージャー以外の者の関与が認めなければ、彼らの身柄は放たれるおそれがある。

次の事件が起こる可能性は大きい。

潤一郎はロビー奥に控える水野に合図を送った。

水野はすべて承知したとばかりに大きくうなずき密かに立ち去った。 

蜂谷と角田の応酬は、さらに続いていた。



「女刑事を逃がしたのもアンタか!」


「逃がす? 誰を」


「捕まえた女刑事が逃げ出した。蜂谷理事長、アンタの仕業だろう」


「香坂捜査官を捕えたのか……とんだことをしてくれたね。彼女は優秀な捜査官だ。

そして、香坂水穂が危険な目にあえば神崎が黙っていない。

神崎を怒らせたらどうなるか、君たちの行動がどれほど無謀だったのか思い知るだろう。

それにしても、君たちはどこまで無能なんだ。

僕たちに従っておけば、こんな失態はなかった」



蜂谷廉がすべてを仕切っていた人物だと蜂谷自身が認める供述があったが、このエリアに監視カメラはない、盗聴器も仕掛けられていない。

ボイスレコーダーを持っていればと、水穂は悔やんだ。



「これでわかっただろう。切手を渡しなさい」


「嫌だ」


「渡しなさい!」


「これ以上アンタたちの言いなりはごめんだ。三枚の絵から数十枚の切手が出てきた。

価格は一億以上だ。蜂谷理事長、アンタが持ってる切手を渡してもらおうか」


「僕が持ってる切手? 僕は一枚も持ってない」


「とぼけるな、この絵の切手を取ったのはアンタだろう! この絵に切手はなかった。

俺たちより先にここにいたじゃないか」


「僕じゃない」


「じゃぁ、誰が取ったっていうんだよ。アンタしかいないだろう」



潤一郎の目が素早く動き籐矢とうなずき合った。

栗山を加えた3人が飛び出す態勢を整える。

水穂もそれに続こうとして籐矢の手に抑えられた。

どうしてですか! と目で訴えるが、ここにいろ! と無言で返された。

角田が蜂谷に掴みかかったと同時に、籐矢たちは掲示板から飛び出した。

掲示板の裏で待機する水穂は、大きく目を見開いて状況を観察していた。

籐矢たちの動きは、打ち合わせをしたごとく見事な連携だった。

角田と仲間たちの前に立ったのは潤一郎で、言葉で動きを抑え込んでいた。

潤一郎へ襲いかかろうとしたひとりを、背後から栗山が取り押さえた。

籐矢は蜂谷と向かい合っていた。

素手と素手の勝負なら籐矢に勝算がある。

しかし、蜂谷の手には鞭が握られていた。

両手で巧みに操られる鞭は蛇のようにしなり、籐矢の動きは封じられていた。



「護身用に携帯していたが、役に立ったのは初めてですよ」


「逃げられると思ってるのか」


「捕まるわけにはいきませんから」



客船はまもなく着岸する。

逃げる算段が整っているのか、籐矢と向かい合いながらも蜂谷は不気味なほど落ち着いていた。

さっきの言葉どおりなら、客船内部で危険な計画が進んでいるということだ。

籐矢をここに足止めして、蜂谷の仲間が客船と客を危険にさらそうとしているのか。

早く決着をつけて捜査本部に知らせなければと、籐矢は焦った。

鞭をかわそうとするが、気持ちばかりが前に出て籐矢が踏み出す足や手はことごとく叩かれた。

スーツの上着を脱ぎ、振り回しながら鞭に対抗していたが、思うように上着を扱えない。

棒一本でもあれば……

籐矢が叶わぬ願いを胸に浮かべたとき水穂の声がした。



「神崎さん!」



投げられたのは特殊警棒だった。

ごく細身の警棒は長さ20センチにも満たない短さだが、伸ばせばその三倍以上にもなる。

水穂がドレスに忍ばせていたものだ。

受け取った籐矢は警棒を素早く伸ばした。

しなる鞭を払いながら、籐矢は決めの一手を探っていた。

警棒に鞭を絡ませ、蜂谷を引き寄せて戦うしかない。

しかし、両手使いの相手に接近戦で勝てるのか……

一本の鞭に警棒が絡め取られたときだった、蜂谷のもう片方の鞭が籐矢の顔へとしなった。

目をしたたかに打たれた籐矢はその場にうずくまった。



「神崎さん! 大丈夫ですか!」


「香坂さんもいたんですか。そんな杖で僕に勝てますか」


「覚悟しなさい」



水穂の手には、潤一郎が証拠品として押収した久我会長のステッキが握られていた。

ハイヒールを脱ぎ捨てステッキを構え、蜂谷を見据えている。

その姿は形に忠実であり、実に様になっていた。

ドレスを着てステッキを手にした水穂を蜂谷は侮っていた。



「鞭であなたの肌を傷つけたくない。無駄な抵抗はやめた方いい」



見下した言葉にむっとしたが、水穂は気持ちを集中させることに努めた。

無心になれと、ことあるごとに言われた師の言葉を思い出していた。

杖道は長い杖を用い、形の演武で勝敗を決める武道である。

直接杖を交えるものではないが、気合い打ちを心得ている。

すぅっと息を吐いた水穂はステッキを下段に構えた。

蜂谷の鞭が空を切ったそのときを逃さなかった。

籐矢が蜂谷の足元めがけて警棒を投げた瞬間、水穂は構えたステッキを振り上げて下ろし蜂谷の体を打ち据えた。

バーラウンジロビーに低いうめき声が響き、わぁっと駆け寄った捜査員たちに蜂谷は取り押さえられた。



「神崎さん!」


「おまえ、警棒を持ってたのか。どこに隠してた」


「ドレスの下です。そんなことより傷は? 額から出血してます」


「傷はたいしたことはないが、目がよく見えない。おい、俺を誘導しろ」


「手当が先です!」


「そんなのはあとだ。『黒蜥蜴』 の奴らを逃がすんじゃない。

船が着岸する前にひとり残らず捕まえろ」


「彼らの身柄は拘束した」



激しく言いあう籐矢と水穂の間に割って入ってきた人物は、ふたりを見下ろしながらゆったりと言葉をつづけた。



「奴らの計画も未然に防いだ。籐矢、目はどうだ。見えないのか」


「計画を防いだって、本当ですか!」


「私がウソを言うとでも?」


「奴らの仲間が、ほかにもいるかもしれないんですよ」


「彼らが全部吐いた。仲間は一網打尽だ」


「全員ですか!」


「籐矢、そんなに私が信用できないか」



苦笑いの京極警察庁長官は、ひざまずき籐矢の顔を覗き込んだ。



「傷の手当てをしっかりしてもらえ。こんな顔を見たら母さんが卒倒するぞ」


「伯父さん……」


「船はもうすぐ港につく、ほどなく客の下船も始まるだろう。

あとは私たちに任せてくれ。事件は内々に処理する」



警察関係の根回しは始まっている、これから私らの出番だよと言い残し、京極長官はその場を離れていった。

バーラウンジのロビーは、駆けつけた捜査員や警察幹部でいっぱいになっていた。

一般客の姿もあったが、彼らは負傷した者を診る沢渡医師と友人たちで、潤一郎の要請で事後処理に加わっていた。



「神崎さん……目は」


「少しずつ見えてきた」



ハンカチで傷口を押える続ける水穂の手に、籐矢はそっと手を重ね握りしめた。



「おまえが無事でよかった」



しんみりとした籐矢の声に、水穂は鼻の奥がツンとうずいた。 



「神崎さんを助けたのは私ですからね、忘れないでくださいよ」


「おまえなぁ」


「さぁ、立ってください。沢渡先生に診てもらいましょう。

傷口を縫っても泣かないでくださいよ」


「泣くか!」



血がにじむ顔で怒鳴るのも籐矢らしい。

怪我人は大事に扱えと文句を言う顔を見ながら、いつもの籐矢が戻ってきたと水穂は思った。


『客船 久遠』 は、優美な船体を港に横付けし、何事もなかったように招待客を無事に陸に降ろした。



・・・・・・・・・・・・
                     


杖道・・・長い杖(木製の棒)を用いて、寸止めで演武する武道。


 

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4 Comments

撫子 s Room  

No title

mizuyoonさん

やっとここまで来ました・・・
時を追って詳細に描いたため、こんなに長くなりました。
華やかな披露宴の裏側で、実は事件が起こっていた!
表舞台の事柄を絡めながら人物を動かすのは、とても楽しい作業でした。

拍手、ありがとうございます^^
嬉しい~!
彼については・・・次回にて・・・

>早くアップしてください!

更新の催促、大歓迎です。
待っていてくださる方がいると思うと元気が出ます。


彼のコンサートへ!
わぁ、いってらっしゃ~い。
サークルで彼の魅力を伝えて、お仲間も増えて、楽しそう。
私も歌声に癒されております。
いつか紅白出場へ! と願いつつ・・・

2014/04/08 (Tue) 17:35 | 編集 | 返信 |   

mizuyoon  

No title

なでしこさんの小説はどれも待ち遠しいのですが、特にshineは謎解き、サスペンス、そして少しだけ恋愛とドキドキの場面が多くて、特に次の展開が楽しみです。
前回のすじが頭に入っておらず、そういえばそういう出来事があったなと、全くぼけた頭で、前後がつながりませんが、今回はなんとなく海外での爆発事件からやっと犯人逮捕に至ったとほっとしています。そのためにも8ヶ月前の回から読み直してみたいと思っています。
宗と珠貴の華麗な結婚式の陰でこんな事件がおこっていたなんて誰も想像しないですよね。たくさんの人物をうまくさばいていくなでしこさんのストーリーの組み方にも拍手、拍手!

彼?誰だろう?またまた次回が楽しみ。早くアップしてください!(わがままばかりでごめんなさい)

5日に彼のコンサートのチケットを買ってきました。趣味のサークルで布教活動をしたらファンが増えて、3人で行ってきます。2人は私ほど熱心じゃないけど、テレビに出た次の日は話題になります。今回は新曲より、馬の踊りで盛り上がりそう。

2014/04/07 (Mon) 22:16 | 編集 | 返信 |   

撫子 s Room  

No title

れんぎょうさん

おもしろく読んでいただけましたか。
ワクワクを感じてもらえてよかった。
嬉しい!

二日間の出来事を、8か月かかってここまできました。
事件の真相も見えてきましたが、まだ不明な部分もあります。

【ボレロ】 で語られた「彼」について触れてくださって頬が緩んでます(嬉しいコメントにバンザイしたいです!)
謎は次回で明らかに・・・

また、お付き合いくださいませ。

2014/04/07 (Mon) 08:24 | 編集 | 返信 |   

れんぎょう  

No title

こんばんは! もう深夜ですが、・・・

あぁ~おもしろかった。わくわくしながら読みました。
最近読み直して最初に読んだ時に違和感があった箇所が
有ったのをを思い出し、そこが漸く理解できました。そこに出てきた人が犯人の一人だと確信しました。でも、〈ボレロ〉を見ると彼は捕まっていないような・・・・
どうやって逃げ延びたのでしょう。また疑問が・・・・

次回を楽しみに待っています。

2014/04/07 (Mon) 00:01 | 編集 | 返信 |   

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